石川: ずっと憧れていた由布院に、やっと来ることが出来ました。なぜ、そんなに憧れていたかというと、『プロジェクトX』に象徴されるように、由布院のあるべき姿について、町の人たちが真剣に考え、今を築いているということに魅力を感じていたのだと思います。
欲に惑わされることなく、価値観がぶれることなく、由布院らしさを守り、多くの人々が憧れる保養地に育て上げていった。その姿勢が素晴らしいと思っておりましたので、是非、そんな町の人たちの想いが詰まった由布院を訪ねてみたいと思っていたのです。
玉の湯さんはじめ、亀の井別荘さん、無量塔さんのように、一度は泊まってみたい素晴らしいお宿があるというのも、大きな憧れとなっていました。
来年2013年に玉の湯さんは、60周年をお迎えになるわけですが、最初から、今の地位を築いていらしていたわけではないはず…。どのようにブランドを築いていらしたのでしょうか?
桑野:宿が、地域の中でどういう役割を果たせるかというと、今回、石川さんが見学された塚原高原 クックヒルファームさんや、江藤農園さん、その他にも魚屋さん、お肉屋さん、畳屋さんなど、暮らしがベースとなってそれぞれの得意をつなぐ役割を果たしているのかなと思います。
クックヒルファームのチーズや、江藤農園のクレソンなど、それぞれがオンリーワンの存在で、そういう魅力を持っている人たちの集合体が、由布院です。
由布院の中にも、様々な宿があって、値段にも幅がありますから、旅の目的によって上手に選んで頂いて、由布院を感じて頂けたらと思います。
今回、歩いて実感されたと思いますが、由布院は小さな町ですから、町のざわめきと静けさが隣り合わせです。橋を渡ると、自然と静けさがあることが玉の湯らしさと思って頂いているようです。
私たちは、宿としてできることをただひたすらやるだけで、特別なことはしていないのです。しいていえば、外と中がつながる場でありたいと思っています。ですから、玉の湯のレストランやバー、お土産屋は、お泊りにならなくてもご利用いただけます。バーは、地元の人と旅行者とが語り合える大切な場です。 |